2009-11-09

ベルリンの壁崩壊から20年。[観た映画と思い出した女性の事]

ベルリンの壁が崩壊してから20年、movie plusチャンネルで『ヒトラー 〜最期の12日間〜(Der Untergang)』。と言うよりもこの映画はよく繰り返し放送しているので崩壊の日に合わせたという感じも別にしないけれど、でもまあ、あれから20年です。タイトル通りヒトラーが自殺して戦争が終わるまでの十数日間を描いた映画でして、なかなか興味深いものでした。映画の終わりでヒトラーが最期まで過ごした地下要塞にて彼と同じように過ごした側近が戦争後どうなったか紹介されるのですが、意外と近年まで生きている方々って多く、壁が崩壊した20年前においてはかなりの数の元ナチス兵が生きていた訳で、彼らが崩壊をどう見たのだろうと思う。大きな壁で取り囲んで人の行き来を塞ぐというのは、最近よく報道されているロシアのプーチン氏の言葉で言うと、「(万里の長城は守るものであったのに対して)不自然なもの」であり、たしかにその通りだと思う。第二次世界大戦が終わったのは平和に過ごす現在において遠い昔の出来事に感じられるけれど、現実に残った物が壊されて20年しか過ぎていないと思うと、それは決してそれほど遠い出来事でもないんだなあと思ったり。

先日Milkaチョコレートの事を書いた時に触れたヨーロッパ旅行の中で、僕は残念ながらベルリンの壁を見て触れる機会はなかった。でもミュンヘン郊外にある強制収容所は訪れ、そこにあるガスチェンバーやらを観た時に感じた重くじっとりした感覚を僕は忘れる事が出来ない。別にハイパースピリチュアルな話ではなく、あまりにもスケールが違うせいなのか、そこに染み付いて取り払う事の出来ない重い空気を感じる事しか出来なかったのだ。その数年後に僕はあるドイツ人と知り合った。とても人当たりがよく、誰もが好感的に思えるであろう五十代の女性で、アメリカ人と結婚した彼女はオレゴン州に住み、そして地元にあるヒューレット・パッカードで働いていた。数人で昼食を楽しんで別れた後、彼女に会わせてくれた僕の知り合いが彼女は今でもヒトラーが偉大だと思っているんだと言った。我々のイメージとしてヒトラーは狂人としてあるんだけれど、ドイツの事を思ってこその事だと彼女は言うらしい。直接僕は彼女の言葉として聞いてはいないので、言葉の重みがどれぐらいなものなのかわからない。僕はその時彼女はなんて時代遅れな考え方をしているんだろうと思ったものの、そういう考え方でヒトラーが行った事を考えた事はなかったから僕にとってはショックだった。決してナチズム(あるいはヒトラーの政治的ポリシー)とホロコーストを別に考える訳にはいかないけれど、でもそこには彼らの考え方があったのは事実だ。この映画を観ていると僕が昔会った事があるあのドイツ人女性を思い出し、そしてあの強制収容所で感じたじっとりとした重い空気を感じた。おそらく、これからもあの重い空気は永遠に取り払う事のできないのだろうと思う。

0 件のコメント: