2010-01-20

ファーストネームがない男。[Parkerの死に思う世の中]

Robert B. Parker(ロバート・B・パーカー)が死んだ。残念な事にハードボイルド小説の死でもあるんじゃないのかなとも思う。ハードボイルド小説と言えばChandlerであるとは思うけれど、ParkerのスペンサーシリーズはChanderのマーロウとは味が違って、こっちも僕は好んで以前はよく読んだ。そう、以前なんだよね。世の中が大きなうねりに巻かれて始めた90年代以降、残念ながら単純なハードボイルドの世界というのはより一層どこか非現実的な世界へ遠ざかり、今度はその大きなうねりが現実的な世界が待っていて、小説の世界においてもハードボイルドの方向性がどこか大きな組織が絡むものになったように思える。それでもParkerは70年代からせっせとそれまでのハードボイルドとは違う視点で書いたし、それこそ大きなうねりによる暴力が世界を巻き込み始めた頃だと思うと、ちょうどParkerは知らないうちに世界のあり方が変わっていくところを見つめつつ、ハードボイルドという視点をキープしたのかも知れない。やがてTom Clancyが出現する事によって正義の観点も当然昔とは違うものになり、これは決してハードボイルド小説とは違うけれど、より一層複雑になった、のかも知れない。世界は確かに複雑になって、暴力や悪の存在に対する正義も一概に正義であるとは言いきれなくなった。ハードボイルドの世界にも徹底した完全なる正義はその昔からなかったものの、でもそこには美学さえあったように思える。ただ時代が今とは違うのだ。

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